インターナショナルスクールの入学試験に向けた準備は、特に新しい教育システムを選ぼうとしている時や、海外移転を控えている場合、あるいは国際カリキュラムに詳しくない状況では、何から手をつければよいか分からず圧倒されてしまうこともあるでしょう。
インターナショナルスクールでは、単なる学力だけでなく、適応能力、言語の発達状況、ソーシャルスキル、そして多文化環境に対する準備ができているかどうかを評価します。そのアプローチは年齢によって大きく異なるため、4歳児と14歳児では準備の仕方も全く変わってきます。
未就学児の入学試験(3歳〜5歳)
この段階では、机に向かって受けるような形式的な「テスト」はほとんど行われません。その代わりに学校側が見ているのは、発達の度合い、自立心、そして社会性の準備ができているかという点です。
多くのインターナショナルスクールは、国際バカロレアの初等教育プログラム(PYP)や、英国式のアーリー・イヤーズ・ファンデーション・ステージ(EYFS)といったカリキュラムを採用しています。そのため、評価の焦点はホリスティック(心身の調和が取れた全体的な発達)なものになります。
学校側がチェックしているポイント
- 基礎的なコミュニケーション能力(その学校の教育言語での意思疎通)
- 保護者と離れて過ごせるか(母子分離ができるか)
- 同年代の子どもたちとの関わり(社会性)
- 手先の器用さや、体全体を動かす力
- 好奇心と積極性
1. 自立心を育む
身の回りの簡単なことが自分でできるように練習しておきましょう。
- 靴を履く、上着を着る
- 一人でトイレに行く
- おもちゃを片付ける
自分でできえる、という自信が積み重なると、観察行動試験の際の不安が和らぎます。
2. 言語に触れる機会を増やす
学校の公用語が英語で、それがお子様の第一言語ではない場合は、以下のような方法で自然に触れる機会を増やしてあげてください。
- 絵本の読み聞かせ
- 歌や童謡
- 日常生活の中での会話
完璧に話せる必要はありません。「この言葉を使っても大丈夫だ」という安心感や、伝えようとする意欲があることの方がずっと重要です。
3. 社会性を養い、自信をつける
プレイデイトやグループ活動の機会を作ってみましょう。先生は、子供が以下のような場面でどう振る舞うかを観察しています。
- おもちゃや道具を周りと共有できるか
- 簡単な指示に従えるか
- 大人(先生など)に対して反応ができるか
詰め込み式の練習(ドリリング)は避けましょう。この年齢のお子様にとって、準備はあくまで遊びの延長線上にあることが大切です。
小学校の入学試験(6歳〜10歳)
小学校のアセスメントは、より体系的なもの(テスト形式)になるのが一般的です。多くのインターナショナルスクールでは、CAT4、MAP、GL Assessmentといった標準化された評価試験、あるいは学校独自の英語と算数の試験を行います。
また、以前在籍していた学校のレポートカードの確認や、インフォーマルな面接も行われます。
学校側がチェックしているポイント
- 年齢相応の読み書き能力と算数能力
- 認知推論能力(物事を論理的に考える力)
- 学業のポテンシャル(これからの伸びしろ)
- 英語力(英語を母語としない場合、または必要な場合)
- 前向きに学習に取り組む姿勢(ラーニング・ビヘイビア)
準備のポイント
1. 基礎学力を固める
あせって模擬試験を繰り返すよりも、まずは基礎をしっかりと固めましょう。
- 毎日読書をし、その内容について親子で話し合う(読解力の育成)
- 暗算のスピードと正確さを養う
- 丁寧な読みやすい字を書き、論理的な文章構成を意識する
もし志望校が国際バカロレア(IB)認定校であれば、探究型(inquiry-based)の思考が重視されます。日頃から「どうしてそうなると思う?」といった、答えが一つではない(オープンエンドな)問いかけを意識してみてください。
2. 少しずつ時間を区切った練習を取り入れる
基礎が固まってきたら、時間を計って問題に取り組む練習を少しずつ始めましょう。
- 1回につき20〜30分程度
- 指示文を最後まで注意深く読む練習
- 間違えた箇所を冷静に見直す
ここでの目的は、完璧を目指すことではなく、時間配分や形式に慣れることです。
3. 英語への自信を育てる(必要に応じて)
海外へ移住されるご家族にとって、言語への自信は最大の壁になることが多いものです。以下のポイントを促してあげてください。
- フルセンテンスで話す
- 語彙力を増やす
- オーディオブックを聴く
多くの学校では、文法の正確さよりも、自分の意志を伝えようとするコミュニケーション能力を評価します。
4. 面接の準備
小学校の面接は、通常対話形式で行われます。よく聞かれる質問の例を挙げておきます。
- どんなことを学ぶのが好きか
- 最近読んだ本について
- 困ったことがあった時、どうやって解決するか
ハキハキと話し、相手の目を見て話す練習は効果的ですが、丸暗記した回答は避けましょう。
中学・高校の入学試験(11歳〜18歳)
この段階のアセスメントは、学業面での評価が格段に厳しくなります。 各インターナショナルスクールでは、以下のようなプログラムを提供しており、それに応じた評価が行われます。
- 国際バカロレア(MYPまたはディプロマ・プログラム)
- IGCSE
- アメリカン・アドバンスド・プレイスメント(AP)
- 各国独自のカリキュラム(英国、米国、オーストラリアなど)
アセスメントの内容には、以下のようなものが含まれます。
- 算数(数学)および英語の試験
- 科目別の専門試験
- 認知推論テスト(論理的思考力を測るテスト)
- エッセイまたはライティングのサンプル提出
- 面接
- 成績証明書の審査
学校側がチェックしているポイント
- ハイレベルな授業に対応できる学力
- 批判的思考力(クリティカル・シンキング)
- タイムマネジメント能力(自己管理能力)
- 学習意欲と精神的な成熟度
- 高い英語レベル
準備のポイント
1. 早めに学習面の穴を埋める
過去のレポートカードを見直し、苦手分野を特定しましょう。特に以下の項目を強化することが重要です。
- 数学的な論理構築
- エッセイの構成と論証の展開
- テキストを深く読み解く力
もしIBやIGCSEのプログラムを志望しているなら、長文エッセイ(Extended writing)や論述形式の回答に慣れておく必要があります。
2. 試験テクニックを磨く
この年齢層のお子様には、実践的なトレーニングが効果的です。
- 本番と同じ制限時間での模擬試験
- 時間配分のシミュレーション
- 採点基準(マークスキーム)の確認
また、以下の「解き方のコツ」を伝えましょう。
- 書き始める前に、短時間でエッセイの構成案(アウトライン)を作る
- 数学では途中式もしっかり書く
- 戦略的な見直しの習慣をつける
3. 面接に向けて思慮深く準備する
この段階の面接では、本人の個性や知的好奇心が評価されます。以下のテーマについて自分の言葉で話せるようにしておきましょう。
- 興味のある学問分野
- 課外活動への取り組み
- 将来の目標
- その学校を志望する理由
丸暗記したスピーチよりも、自己理解(自分を客観的に捉える力)が評価されます。自分らしい誠実な回答を心がけるよう促してあげてください。
4. メンタルヘルスをサポートする
10代の子供は、プレッシャーを一人で抱え込みがちです。生活のバランスを保てるよう配慮してあげてください。
- 睡眠時間を最優先する
- 適度な運動を勧める
- リラックスできる時間を確保する
最後に、合否の結果は個人の能力だけでなく、学年全体のバランス(国籍や男女比など)も考慮して決定されるということを伝え、子供の心理的負担を和らげてあげましょう。
海外移転を控えたご家族へ:最後に伝えたいこと
インターナショナルスクールの受験には、移転によるストレス、言語環境の変化、文化への適応、そして限られた枠をめぐる競争など、特有の難しさがいくつも重なります。
しかし、どの年齢層であっても、最も効果的な準備は以下の4点に集約されます。
- 確かな基礎学力
- 少しずつ、現実的に進める練習
- 自信を育むための対話
- そして、保護者様が穏やかで揺るぎない心構えを持つこと
お子様が最も成長するのは、家庭が評価される場所ではなくサポートされる場所であると感じられた時です。
入学アセスメントは、これから始まる長い旅のほんの一歩に過ぎません。お子様に本当にフィットする学校とは、一度きりのテスト結果だけで決まるものではないのです。
