インターナショナルスクールやプリスクールを選ぶ際、ご家族で検討材料の一つに学校が採用しているカリキュラムが挙げられると思います。都内のインターナショナルスクールを訪問した際、様々なカリキュラムに基づき、素晴らしい教育や学習が行われているのを目にしました。表題の疑問に答えるため、まず東京のインターナショナルスクールで提供されている主なカリキュラムを見てみましょう。
国際バカロレア(IB)
私たちの調査では、東京のインターナショナルスクールで最もよく使われているカリキュラムは、国際バカロレアです。現在、約40%の学校で一部または全面的に採用されています。3歳から19歳までの生徒を対象とした4つの教育プログラム、プライマリー・イヤー・プログラム(PYP)、ミドル・イヤー・プログラム(MYP)、ディプロマ・プログラム(DP)、キャリア関連プログラム(CP)で構成されています。
生徒は、文化的アイデンティティの形成に加え、個人的・職業的成長のためのスキル発展を学習し、振り返りがこのプロセスの重要な役割を果たします。PYP(3歳~12歳)は「探究の単位」を通じて指導され、IBが「段階」で定めた目標の枠組みを用います。一方、MYPでは8つの科目群(言語習得、言語と文学、個人と社会、科学、数学、芸術、体育と健康教育、デザイン)を学びます。IB学習者像には、探究する人、知識のある人、考える人、コミュニケーションができる人、信念をもつ人、心を開く人、思いやりのある人、挑戦する人、バランスのとれた人、振り返りができる人といったIBが価値を置く人間性を 10 の人物像として表し、このプログラムを通じて若者の育成を目指しています。これらはIBプログラムで行われる指導の基本です。
ケンブリッジインターナショナル
ケンブリッジ大学国際教育機構によって開発されたケンブリッジ・インターナショナルも、東京で広く使われているカリキュラムの一つです。Cambridge Pathwayは初等教育から中等教育、大学入学準備教育まで、4段階のプログラム(ケンブリッジ・プライマリー、ケンブリッジ・ロウアー・セカンダリー、ケンブリッジ・アッパー・セカンダリー、ケンブリッジ・アドバンスト)がシームレスに続きます。東京のインターナショナルスクールの約20%で一部または全体的に使用されています。
ケンブリッジ・プライマリーおよびローワー・セカンダリーは、10科目(英語、第二言語としての英語、数学、科学、コンピューティング、デジタルリテラシー、グローバルな視点、音楽、体育、アート&デザイン)で構成されています。ケンブリッジ・アッパーセカンダリー(14~16歳)は、ケンブリッジ・ローワーセカンダリーのスキルと知識を基礎とし、正式な資格取得を目指す2つのルートで構成されています: ケンブリッジIGCSEとケンブリッジOレベル。ケンブリッジ・アドバンス(16-19歳)は、大学やその他の高等教育機関への進学を目指す生徒のためのコースです。ケンブリッジ・インターナショナルAS&Aレベルの正式な資格取得を目指します。ケンブリッジ・グローバル・パースペクティブは、ケンブリッジ・パスウェイの全コースで使用されるプログラムで、リサーチ、コラボレーション、リフレクション、クリティカルシンキングなどのスキルを伸ばすことを目的としています。
インターナショナルカリキュラム
インターナショナル・カリキュラムは、インターナショナル・アーリーイヤーズ・カリキュラム(IEYC、2~5歳)、インターナショナル・プライマリー・カリキュラム(IPC、5~11歳)、インターナショナル・ミドルイヤーズ・カリキュラム(IMYC、11~14歳)で構成されています。インターナショナル・カリキュラムは、現在、東京のごく一部のインターナショナル・スクールでのみ導入されていますが、世界90カ国以上で全面的または一部導入されています。
このプログラムは3つの学習タイプ(パーソナル、インターナショナル、アカデミック)に基づいて教育されています。学習者は、言語、数学、科学、美術、社会、地理、歴史、技術、音楽、体育など、さまざまな教科をテーマ別に学習します。また、適応力、コミュニケーション力、協調性、探究心、道徳心、回復力、尊敬心、思慮深さといった8つの属性や「個人的な学習目標」を掲げています。IYMCは、イギリスのナショナル・カリキュラムおよびアメリカのコモン・コア・スタンダードに準拠しています。
モンテッソーリ&レッジョ・エミリア
このカリキュラムは、私たちが訪問し調べたインターナショナル・プリスクールで最も多く導入されていましたが、モンテッソーリ・スクール・オブ・トーキョーという15歳まで生徒を受け入れている学校もあります。これらのカリキュラムは子ども中心で、子どもが主導で学習し(「自己主導型学習」)、多くの「体験学習」が行われます。幼児期には、遊びを通した探究心が重視され、レッジョ・エミリアの学校では、自然や天然資源・素材も重視しています。さらに、年少児が年長児から学び、年長児がリーダーシップを養うことができる多年齢クラスが一般的です。
アメリカのカリキュラム
東京のインターナショナルスクールで導入されている2つの主要な国(アメリカ、イギリス)のカリキュラムのうち、アメリカベースのカリキュラムがより広く導入されており、20%強の学校が一部または全面的にカリキュラムを採用しています。例えば、英語、数学、科学、歴史、外国語、美術、音楽、体育といった同じような科目を学校生活全体を通して学ぶ、幅広いカリキュラムです。高校の最後の2年間は、追加科目を学ぶことができます。国家としてのカリキュラムはなく、カリキュラムの決定は州、当局、各学校に委ねられています。 しかし、多くの学校では、幼稚園から高校3年生までの国語と数学の共通基準である「コモン・コア・ステート・スタンダード(CCSS)」を採用しています。CCSSは、幼稚園から高校3年生までの国語と数学の共通基準であり、生徒が各学年で履修すべき内容を示しています。
イギリスのカリキュラム
現在、東京で4校のインターナショナルスクールが、イギリスまたはスコットランドのカリキュラムを使って授業や学習を行っています。主に採用されているのは、イギリスのナショナル・カリキュラムで、イギリスのすべての公立学校で教えるべき科目と、学習範囲を定めています。生徒たちは、最初はアメリカの教育制度と同じように、シチズンシップや宗教教育も単独教科として含んだ幅広くバランスの取れたカリキュラムを学びますが、キーステージ4(Year10&11、14~16歳)および5(Year12&13、16~18歳)では、正式な試験(GCSEやAレベル)を受験する科目を専門的に学ぶことができます。これらの資格は、大学やその他の高等教育機関への進学に必要な資格です。
ナショナル・カリキュラムを採用している学校はインターナショナルなのか?
「国際的な」カリキュラムを採用している学校だけが真にインターナショナル(国際的)だという誤解がありますが、実際には、ナショナル・カリキュラムを導入している多くの学校もまた、その展望と重視している内容において非常に国際的であることがわかっています。国際的であるかどうかは、何を教えるかという具体的な内容によって決まるのではなく、教育や学習に対するアプローチの仕方や、学校のもつ価値観によって決まります。国際的な視野を持つ学校は、生徒が心を開き、異なる視点を大切にし、多様性を受け入れ、世界のさまざまな文化を尊重するように促します。その核となるのは、自分の地域や個人のアイデンティティを理解することであり、そうすることで初めて、自分が国際社会とどのようにつながっているかを知ることができるからです。
国際マインドという概念は広範にわたりますが、簡単に言うと、教育や学習に対する以下のようなアプローチに見ることができます。生徒たちは様々な活動やプロジェクトを共同で取り組み、グループ内での役割分担、問題解決、他者の考えや提案への配慮などを学びます。生徒たちは積極的に自分の経験や意見を共有することで、より深い理解と共感を得ることができます。また、自分や他人の考えを振り返る時間もあります。学校は、文化や伝統の違いや共通点について学ぶ機会として生徒の多様性を活かしています。これらは、カリキュラム主導のものではなく、生徒が真に国際的な視野を持った人間になるために、学校がコミュニティとして取り入れている価値観や経験です。
カリキュラムは指導内容に影響を与えるか?
初等教育段階では、履修スピードは学校によって大きく異なります。例えば、イギリスは多くの国よりも早い段階から教育を開始しますが、高校を卒業するころにはどのカリキュラムも、平均的な生徒の履修内容はおおむね同じような水準になります。特定の科目をいつ教えるかやその科目のどこに重きを置くかなど、カリキュラムの構成は異なるかもしれませんが、英語・算数・理科などの教科は、世界中で同じような内容が教えられています。歴史や地理などの他の分野では履修内容が大きく異なる場合があり、学習するスキルの種類は変わらないけれど、例えばイギリスの歴史とアメリカの歴史といったように、重きを置く知識の内容が異なる場合があります。
年齢が低い時期は他の分野や概念を結びつける方が学習しやすいので、ほとんどのインターナショナルカリキュラムやナショナルカリキュラムでは、未就学期と初等教育の時期に、テーマに関連した学習や教科横断的なアプローチを取り入れています。年齢が上がるにつれ自分自身で関連づけができるようになるため、中等教育では、通常、どのカリキュラムでも教科別の学習がメインとなります。探究学習は優れた指導と学習の模範となるため、インターナショナルカリキュラム・ナショナルカリキュラム問わず、すべてのカリキュラムで導入されています。
カリキュラムは高等教育にとって重要か?
お子様が大学や専門学校に進学するかどうか、またその進学先についてすでにお考えをお持ちかもしれません。例えば、アメリカの大学だからアメリカのカリキュラムというように、その考えに基づき子供の進路にベストなカリキュラムをすでに決めていらっしゃる方もおられると思います。しかし、実際は、どの国の大学やカレッジも、世界中から学生を受け入れているのです。国によってカリキュラムが異なるのは当たり前なので、カリキュラム間の学業成績を変換するシステムはすでに導入されており、例えばイギリスの教育システムで勉強した学生がアメリカの大学に出願し進学するのは難しいことではありません。これは、国際バカロレアであろうとケンブリッジ・インターナショナルであろうと同じです。その一例として、アメリカで学ぶ留学生の大半は中国出身ですが、中国のインターナショナルスクールで最も人気のあるカリキュラムは、アメリカ式カリキュラムではなく、国際バカロレア、次いでイギリス式カリキュラムです(インターナショナルスクールデータベースによる情報)。したがって、特定のカリキュラムに個人的な好みがあるかもしれませんが、大学やカレッジに進学する際には、それが有利にも不利にもなりません。
最後に
東京のインターナショナル・スクールで提供されるカリキュラムはどれも質が高く、高等教育やグローバルに活躍するための準備として十分なものです。一部の分野では学習内容に多少の違いがあるかもしれませんが、一般的に教えられているスキルやコンセプトは非常によく似ています。カリキュラムの内容ではなく、学校の価値観や教育・学習へのアプローチこそが、国際的な視野を持った学校となるのです。
次のブログでは
生徒の多様性は重要か?私達が訪問した学校の中には、他の学校よりも国際色豊かなインターナショナルスクールが何校かありました。次回のブログでは、このトピックについてもう少し掘り下げてみたいと思います。